個人向け社債ウォッチ!

個人向け社債の起債情報をウォッチするブログ。個人向け社債の購入方法に関する記事や個人向け社債のランキング、個人向け社債の利率などの記事。初心者歓迎。3年物の個人向け国債の金利推移もウォッチ

フォルクスワーゲンは逝ってしまうのか

社債が出ない時は株ネタ時流を追いかける当ブログでは今回、フォルクスワーゲンが2014年の世界総販売台数ナンバー1に輝き、米当局に目をつけられることとなったことを記念して、フォルクスワーゲンの財務分析に挑んでみたいと思います。2兆円とも言われる制裁金を払いきれるのか、それともタカタの仲間入りなのか。アメリカは自国の自動車メーカーには甘いくせに他国の自動車メーカーが伸びると嫌がらせをする癖があります。タカタはともかくも、トヨタの件にしてもVWの件にしても反米主義を育てるだけなので、いい加減気づいてほしいものです。

今回のVWの問題を簡単に解説すると、VWは環境規制をクリアする車を開発する代わりに、環境規制テストを研究し、その試験と同じ状況の走りをした時に排ガスがほとんど出なくなるようなプログラムを作成し、実車に搭載して販売したというものです。不正行為は明らかですが、それで人が死ぬかと言われると、正直微妙と言わざるを得ません。ただ、環境汚染は広く薄く、しかし確実に人を殺すので、責任は重大と言わざるを得ません。

さて、フォルクスワーゲンの財務内容です。2014年の決算書が英語版で公開されています。1ユーロ=135円で計算するとこんな感じでした。

B/S項目
総資産:47.4兆円(トヨタとほぼ同額)
純資産:12兆円
現預金:2.5兆円

P/L項目
売上高:27兆円
当期純利益:1.5兆円

潰れない(確信)

もう少し財務分析的に楽しませてくれるかなと思ったのですが、これでは逝ってしまうのかの土俵に乗りません。むしろ株価が下がっているのであれば仕込み時はいつかを探るべきですし、高利で社債が転がってきたら買うべきです。ただ、環境テストをクリアする車を開発することは今後絶対に必要になってくるでしょうし、それまで販売停止という可能性もあります。

ですので、財務の悪化を免れるということはないでしょうが、トヨタ同様金融部門も大きく、即死するほどのダメージにはならないでしょう。そもそも和解に持ち込むという解決策がまだ残されており、裁判を長引かせて水面下で和解を探り、その間に環境規制をクリアするよう研究開発を進めるなり、技術を持っている企業を買収したり業務提携をしたりという道もあります。金融資産も結構持っており、倒産に至る可能性は低いと考えられます。

というわけで、今回は詳しく調べるまでもないという結論に至りました。また気になる企業があれば分析しますね。


PageTop

シャープは逝ってしまうのか 2015年春

先日、シャープの2015年3月決算が発表されましたが、あまりに大きな赤字が出たため市場は動揺し、株価も大きく下がっています。しかし、当ブログ的には株価より気になることがあります。シャープはこのまま倒産してしまうのではないかという懸念です。果たして懸念は真実なのか。美しさと愛着(意味深)、予期せぬ驚き(意味深)、家電達との情緒的つながり(意味深)をもって、今回の記事を書きたいと思います。


というわけで、公開されたシャープの2015年3月期決算を眺めてみますとまず、単体で債務超過に転落したことが目に付きます。昨年度末に1934億円あった純資産を今期の赤字で使い切り、60億円の債務超過となっています。

これは、今期2000億円の赤字が出たことによるものですが、問題はその中身です。シャープの今期の売上と営業利益の推移を見てみると、とんでもない事実が明らかになります。

累計売上高四半期売上高累計営業利益四半期営業利益
第1四半期619761974646
第2四半期132767079292246
第3四半期209047628512220
第4四半期278626958-480-992
(単位:億円)

これは一体どうなっているのか。わずか3ヶ月で1000億円近い赤字を計上しています。2000億円の赤字のうち1000億円が減損損失であり、残り1000億円はこの3ヶ月で失ったものです。

さらにこの1000億円の中身を見ていくと、シャープは第4四半期で売上総利益を80億円程度しか稼いでいないことが分かります。そして、その原因の多くは買付契約評価引当金(546億円)によるものであることが推測されます。これは決算発表日にプレスリリースが出ていますが、ソーラーパネルの原材料を長期契約で買ったものの、その後相場が下がって買えば買うほど損失が出るけど止められないよというものです。

馬鹿じゃねーのか

いつ契約したものか分かりませんが、太陽光のパネル価格は震災直後の太陽光ブームの時には既に先安感が蔓延しており、FITの権利だけ取って太陽光パネルの値下がりを待つ輩が続出し、問題になったのは有名な話しです。また、半導体は基本、長期的には値下がりし続けるものであり、それを長期契約で買うなど狂気の沙汰です。貧すれば鈍するとはこのことなんでしょうかね。

また、それを除いてもなお、シャープの売上総利益率は大きく減少しています。きっと相当工場が病んでいるんだろうと推測します。毎年のように行われるリストラ、上がらない給料、優秀な人から逃げ出す希望退職と転職なんて事態が起きているのでしょうか。もしそうだとしたら、現場の従業員のやる気も最低レベルに近いんでしょうね。店舗がだんだん汚くなってきているマクドナルド状態。リバイバルには時間がかかりそうです。それまで持つのか。

さて、こんな事態となったシャープの再建策ですが、とりあえず優先株を2250億円発行してうち2000億円を借入金の返済に充当。優先株のうち2000億円は銀行に割り当てるので、事実上のデット・エクイティ・スワップです。とりあえず単体での債務超過はこれで解消。赤字の穴埋めも出来ました。

しかし、問題はここから。収支を回復させなければ株券印刷業へまっしぐらなのですが、決算とともに発表された中期経営計画を見る限り、やる気は伝わってきません。なんというか、「儲かってない中小企業の社長が作らんと追加融資しないぞと銀行に言われて渋々作り、達成できるわけはないけど銀行も渋々認めて追加融資する経営改善計画書」っていう感じがするんですよねえ・・・だいたいなんなんだこの人に一番近いシャープって。会社更生に一番近いシャープの間違いじゃないのか。

まあただ、こんな計画でも銀行が認めて資本注入と融資継続に応じるわけなので、もうしばらくの間はシャープは逝ってしまわないのでしょう。ただ、このままでは徐々にジリ貧が続き、最終的に逝ってしまうことになるものと思われます。生き残りの鍵はでしょう。強烈なショックを経営陣や従業員に与えることができ、これまでのしがらみや非効率性を破壊し、再成長軌道に乗せることが出来る人物を外部から呼んできて社長に据え、好き放題やらせることがポイントでしょう。


橋下徹とか適任じゃないでしょうかね


PageTop

【復活】シャープは逝ってしまうのか 予告編

シャープが中小企業になるという報道が出ております。正確には資本金を1億円に減資するというものです。

中小企業基本法では、製造業の場合中小企業は資本金3億円以下であるか、従業員数が300人以下である企業を中小企業としていますので、資本金を1億円にすることは中小企業になるということで間違いではないのですが、シャープの狙いはそこではなく、資本金を1億円にすることによる税務上のメリットを獲得することが今回の減資の狙いです。さすが、目指してる未来が違う。経営理念の一番上に「いたずらに規模のみを追わず」と書くだけのことはあります。

このブログには法人を設立されていらっしゃる方も多いかと思うので、そういった方には釈迦に説法とは思いますが、改めて資本金を1億円にするメリットについて思いつく範囲で挙げてみましょう(情報が少し古いかも)。

・外形標準課税の適用除外
・内部留保課税の適用除外
・800万円以下の所得に対する軽減税率
・試験研究費の税額控除
・特別償却
・交際費の損金参入
・教育訓練費の税額控除
・欠損金の繰り戻し還付
などなど・・・

でも、上場企業だから内部留保課税とか関係ないし、特別償却とか税額控除とか交際費とか軽減税率とか、そもそも法人税なんか払わなくていいから関係ないだろうし、大きそうなのは外形標準課税逃れと欠損金の繰り戻し還付狙いでしょうか。

さて、シャープがまたまたおかしくなってきたところで人気シリーズを再開したいと思います。シャープの3月決算は5月14日に開示されますので、今週末あたりをめどに記事をアップしたいと思います。東芝みたいに延期にならんといてくれよ~


PageTop

タカタは逝ってしまうのか

アベノミクス以降、倒産リスクが取り沙汰される企業というのはめっきり減ってしまいましたが、ようやくここに来て逝ってしまうのかシリーズに掲載されるべき企業が登場しました。リコール問題で揺れる自動車部品製造業、タカタ。既に社債のスプレッドは拡大基調にあり、クレジットリスクも顕在化してきています。じっくり分析していきましょう。

タカタのここ数年の財務内容は以下の通りです(単位百万円)。

22/323/324/325/326/326/6
売上高350,914390,876382,737415,521556,998151,025
経常利益15,67227,00813,49917,05025,6567,966
当期純利益6,94218,23711,937-21,12211,144-38,649
純資産額150,789155,312161,186154,085176,888134,875
製品保証引当金18,45714,29914,60746,90946,25388,747
営業キャッシュフロー26,13323,0343,57323,46030,615-

平成26年6月は第一四半期なのでキャッシュフロー計算書はありません。決算を見た第一印象は、「意外」ということです。リコール問題が起きているにも関わらず売上は増加傾向にあり、経常利益も増加傾向です。自動車売れてるんですね。

一方、財務面では製品保証引当金を積み増しており純資産額が減少してきています。今後一層のリコール拡大も予想される中、果たしてタカタはリコールに耐えられるのでしょうか?

タカタのエアバッグ事業について検討してみましょう。タカタは、売上の40%をエアバッグに頼る企業です。過去5年間の売上の合計額がおよそ2兆円ですので、ざっと8,000億円ほどのエアバッグを過去5年間で出荷していることになります。また、エアバッグの世界シェアは20%とのことですので、世界の自動車販売台数が年間8,000万台であることを考えると、過去5年間で8,000万台の車に対してエアバッグを取り付けてきたという計算になります

こうしてタカタが取り付けてきたエアバッグがリコールにかかっているわけですが、ところでどれだけのエアバッグがリコールされているのでしょうか?調べてみたところ、ウィキペディアぐらいしかソースが見つからなかったのですが、2014年8月時点で1,630万台のリコールがかかっているとのことでした。

こうした状況をもとに最悪の事態を想定すると、リコール台数は合計8,000万台(過去5年間にタカタのエアバッグが搭載された車全てがリコールされると想定)、1台5,000円のリコール費用として考えると、最大で4,400億円のリコール費用がタカタに発生、リコール保険には入っていない(保険会社は近年のリコールの規模拡大を受け、保険を引き受けたがらない傾向)と考えると、タカタの総資産(純資産ではない!)が全て吹き飛びます

あかん。死ぬ。

なお、1台5,000円というのはこれまでに発生しているリコール台数1,630万台とタカタが引き当てている製品保証引当金887億円からおよそで算出しています。shasaiwatchの適当な推測が実現すれば、タカタは確実に逝ってしまうでしょう。有利子負債が900億円程度で純資産の蓄積も厚い、本来であれば優良安定企業であるはずのタカタですが、頓死です。この死に方、第二の東電ともいうべきです。

創業80年、シートベルトの製造に着手して60年、ニッポンのモノヅクリのユーシューセーを証明してきたはずの企業でしたが、降ってわいたリコールで交通事故のように逝ってしまいそうです。企業経営にエアバッグはなかったのでしょうか?

しかし、タカタはこうした逆境下においてもなお、営業キャッシュフローを年間200億程度は稼ぎ出す企業です。このあたりも東電とよく似ていて、本業がそもそも評価されていないダメ企業ではないんですね。リコール費用にしてもshasaiwatchの見積もりが正しいとは限りません。ひょっとするとリコール保険にだって入っているかもしれません。

リコール費用を抑制し、事業再生ADRを申し立て、スポンサーを見つけて出資を得、減資によって既存の株主には退場してもらい、銀行の支援を仰ぎ、長い時間をかけて信頼を取り戻せば逝ってしまうという最悪の事態は避けられるかもしれません。事業価値はある企業です。法的整理に至ってもどこか拾う神はいるでしょう。従業員が路頭に迷うという事態には至らないのではないでしょうか。

ただ、従業員が路頭に迷うかどうかを考えなければならない段階に至っている企業になってしまっていることはよく認識すべきで、リコールの底が見えるまでは社債や株を買いにいくという行為は控えたいものです。もしもタカタが個人向け社債を発行してきても、現時点では買い非推奨ということになるでしょう。

PageTop

【総力特集】東京電力は逝ってしまうのか 第3回

第1回はこちら
第2回はこちら

前回、過去に社会問題を引き起こし、多額の賠償債務を抱えるようになった企業の事例を研究しました。今回は、こうした事例を踏まえ、東京電力の財務的処理方法を探ってみたいと思います。なお、今回の特集では原発の是非などの別の話題にはなるべく踏み込まないこととします。原発の是非と事故処理とは直接の関係はないですしね。

さて、現在の東京電力には以下のような責務があります。

1.電力供給の継続
2.賠償金の支払い
3.廃炉と除染の実施

しかしながら、廃炉は現状、ようやく4号機の燃料取り出しが始まった段階であり、完了までに数十年、あるいは百年以上が必要と言われています。除染についてはそもそも基準すら決まらない状態であり、賠償金は政府支援がなければ即座に不能になる状態。出来ているのは電力供給ぐらいですが、こちらも老朽火力を使って凌いでいる状態であり、原発の再稼動か、火力の増設は不可欠です。東京電力の経営状態はボロボロであり、差別事件が起きていることや給料が下がっていることなどから従業員はわれ先にと逃げ出している状態。立ち直るにはかなりの努力が必要です。


とりあえず、東京電力の実質的な債務を試算してみたいと思います。まずは廃炉費用です。
廃炉費用は、一般的な原発で1基1000億円程度とされていますが、事故を起こした福島第一原発については総額で1兆円程度の費用がかかるといわれています。また、福島第二原発も廃炉が決まったため、同原発にある4基の費用、合計4000億円も必要です。余裕を見て、1兆5000億円程度と見込んでおきましょうか。

次に、除染費用です。除染費用は基準をどこにするかで大きく金額が変わってきます。1ミリシーベルトまでの除染を実施すると、5兆円という試算結果がありますが、一方で5ミリだと3兆円、20ミリだと2兆円だという試算結果もあります(たぶんソースは産総研)。政府内で検討されているという「現実路線」が何を指すのか分かりませんが、こういう時はだいたい間を取ることが多いので、5ミリだとここでは仮定して、3兆円かかるとしておきましょう。

次に賠償金です。賠償金の支払額は全く分かりませんが、既に5兆円程度を支払っている様子で、今後も徐々に減ってはくるのでしょうが、やはりもう5兆円程度は覚悟しておかなければならないと思います。

また、原賠機構への返済も必要です。現時点で4兆円少しあるため、これも加算する必要があるでしょう。また、国民負担を0とするためには機構の優先出資1兆円も返済させる必要があります。債務じゃないけど、返済が必要ということでこれも債務に加えときましょう。

こうして考えると、現時点で原発関連債務としてだいたい14.5兆円の債務があるということです。また、それとは別に社債4兆円、借入4兆円、仕入れ代金等の非金融債務1.5兆円があるため、東京電力には合計、24兆円の債務があると言えるでしょう。JAL10個分。リーマン・ブラザーズの4割弱wwwwww。平成25年9月中間決算時点では、東京電力のフリー・キャッシュフローは半年間で750億円でした。2007年~2011年の5年間で見ても、東京電力の平均年間フリー・キャッシュフローは1500億円でしたので、東電の業績はほぼ、震災前の業績に戻ったと言えるでしょう。しかしながら、この業績だと負債がゼロになるのは160年後、2173年になります。ドラえもん誕生から61年後のことです。


どげんかせんといかん(死語)


こうした事態の時、一番手っ取り早いのは法的整理(武富士方式)です。
会社更生法の場合、全債務を払える範囲にカット。例えば10年払いの1兆5000億円ぐらいに設定するという方法が取られますが、これっぽっちの金額では優先権のある一般担保付債権者すら債権カットを要求され、被災者・銀行・株主・政府・取引先・従業員は総泣き寝入りとなるため、更生計画は不成立となるでしょう。
そうなれば次は破産で、財産を叩き売って換金し、配当に充てます。この場合、会社更生よりもさらに配分できる金額が減るのが通例で、いずれにせよ被災者には1円も渡りません。法的整理の価値は、東電憎しの連中が絶頂射精出来ること以外の意味がないでしょう
なお、破産の時にオウム真理教方式で債権の優先順位を変更することは特別法で出来なくはないのでしょうが、それでもなお、被災者は大幅な債権カットを強いられる上、一般担保付社債の債権者が1人でも違憲立法訴訟を起こすと財産権侵害で国が敗訴する可能性があります。主要な債権者である保険会社あたりは金融庁から脅しをかけ、外国人がいたらその国の政府に土下座外交をして押さえつけてもらい、日本人がいたら公安が脅して訴訟を起こす権利を奪う必要があるわけですね。それをやったらもはや民主主義国じゃないです。ていうか外国人は対応が無理そう。

というわけで法的整理はうまくいきそうにありません。国民負担を増やして解決するカネミ倉庫方式か、あるいは延々と賠償金を払い続けるチッソ方式か。shasaiwatchはチッソ方式しかないのだとろうなあと思っています。カネミ倉庫の国民負担は年間2億で済むけれども、東電は国民負担の規模が大きすぎます。

資産負債
X億円 事業価値  40,000億円 一般担保付社債
  40,000億円 銀行借り入れ
  15,000億円 廃炉費用
  30,000億円 除染費用
  50,000億円 未払い賠償金
  40,000億円 原賠機構返済
  15,000億円 非金融債務
  10,000億円 原賠機構優先出資
240,000億円 合計


チッソ方式(生かして何年かかろうとも支払わせる方式)では、打つ手が広がります。まず、非金融債務は生きている企業の場合、日々発生し、日々弁済されるものなので、営業活動を継続している限り、事実上支払わなくとも良い債務です。これでとりあえず1.5兆円ほど負債が圧縮されます。

次に、株主を泣かせましょう。これまで株主の話はほとんど出てきていませんでしたが、shasaiwatchは株主責任だけは絶対に避けて通ることは出来ないと考えていますし、政府もどうやらそのように考えているようで、普通株式ではなく、優先株式を持っています。株主には100%、上場を維持する必要がある場合には99%の減資を呑ませ、政府の優先株を普通株式に転換しましょう。つまり、東電の国有化です。政府の持っている優先株には議決権がついているため、そんなことも可能です。これで優先出資の1兆円も返済しなくて良くなります。

また、債務の上限を固めましょう。保険会社を呼び、廃炉費用、除染費用、未払い賠償金についてそれぞれいくらになるか推算させます。そして、保険料を払う代わりに東電、または政府が推測するこれらの費用を上回った場合には、保険会社が代わりに支払うよう求めるのです。入札を行わせ、もっとも東電や政府に有利な条件を提示した保険会社に受注させましょう。これによって、予想外にこれらの費用が膨らんだ場合でも、東電は保険で支払えばよいので、安心して仕事が出来ます。

社債については、銀行借入で肩代わりしていくしかないでしょう。しかし、銀行借入については、震災前の残高(1.5兆円ぐらい)をDDS(※1)かDES(※2)により、廃炉・賠償・除染よりも支払いを劣後させます。総額1.5兆円であれば、過去の国債バブルの収益や昨今の景気動向から見て、銀行団も呑んでくれるのではないでしょうか。

これらの方法により、返済を要する債務は20兆円まで圧縮することが出来ました。これだけやってもなお、東電復活には133年4ヶ月を要し、2147年までかかるわけですが、法的整理でウンコを撒き散らしながら華々しく散るよりはいくぶんマシだと思います。どうせ廃炉は22世紀までかかるだろうし、銀行筋も133年間金利をもらえて破綻しない企業だと事前に読めるなんて本当は嬉しいでしょうし、完済が近くなってきたら分社化して身売りすることで完済を早められるし、それに

過去100年で

2000倍のインフレが

進んだことを考えると

今後133年で

その平方根ぐらいの

インフレにはなるだろうし

そうなれば何もかも

うやむやに出来るだろうし


これがベストの案だと思います。ドラえもん完成には間に合いませんが、完成したらそれこそドラえもんが何とかしてくれると思ったの世界です。


さて、全3回にわたってお送りしてきました総力特集、いかがでしたでしょうか。そろそろ新しい社債も出てきているので、通常運転に戻りたいと思います。また気になる企業が出てくれば特集してみたいですね。

※1:デット・デット・スワップ。通常の債務に劣後特約をつけること。
※2:デット・エクイティ・スワップ。債務を株式に転換すること。



PageTop

【総力特集】東京電力は逝ってしまうのか 第2回

第1回はこちら

前回、東京電力の問題は過去の問題企業全ての合計を上回ると書きましたが、過去に問題を起こした企業の処理はどうなったのでしょう。過去の事例を研究し、東京電力の処理方法を考える際の参考にしてください。


ケース1:水俣病(問題企業:チッソ)

水俣病は、チッソによる有機水銀の水俣湾への放出により発生した公害病です。被害の詳細についてはもっと詳しいサイトがあるかと思いますのでそちらを参照していただくとして、チッソはその後、どのように処理されたのでしょうか。

水俣病の発生と問題の認定を受けてチッソは賠償金の支払いを実施しました。しかし、賠償金はあまりにも多額であったため、チッソは債務超過に転落。熊本県や国の支援を受けながら賠償金を払い続けて来ましたが、1000億円以上の債務超過は解消のしようがなく、また多額の債務超過が負担となりチッソ自身の事業活動に制約が出るようになりました。

最終的にチッソは、事件発生から50年以上を経て、わざわざ特別法を作って会社分割を実施。資産超過の事業会社JNCと、債務超過の親会社チッソに分割され、チッソはJNCの収益をもって水俣病患者への支払い(昨年の実績は130億円程度)を実施しています。おそらく、全ての被害者に支払う債務が完全に確定した時点で、チッソはJNCを上場させ、売却益で全額支払ってしまい、国民負担を残して清算するでしょう。それまで何年かかることやら。

この事例から、東京電力を分割して売却し、損害賠償や廃炉費用に充てることが可能だと分かります。


ケース2:地下鉄サリン事件(問題企業:オウム真理教)

地下鉄サリン事件はオウム真理教が起こしたテロ事件で、地下鉄で猛毒のサリンを撒き、多くの人を殺傷した事件です。オウム真理教を企業というのはどうかという話もありますが、分析対象としては面白いので見ていきます。

オウム真理教は事件後、破産します。要は、テロ被害者への賠償金を支払わなければならず、生かしたまま支払いをさせることが困難とみなされたため、破産手続きにより強制的に賠償金を支払わせることにしたものです。

しかし、ここで問題が発生。テロ被害者に支払われた労災保険のうち、国の負担となる分は国の債権となり、優先債権になることが判明。破産法をそのまま適用すると、労災保険が適用されなかった被害者への支払額が大きく減ることになりました。

そこで政府は、「オウム真理教に係る破産手続における国の債権に関する特例に関する法律」という長い名前の法律を通し、損害賠償請求権を国の債権に優先させるように変更しました。さすが国権の最高機関は違いますね。

この事例から、法律一本で優先債権をブチ破れることが分かります。なお、国ではなく民間の債権をブチ破った場合、財産権侵害で違憲立法になる可能性は否定できません。


ケース3:過払い金破綻事件(問題企業:武富士)

過払い金破綻事件は、多額の過払い金返還債務を負った武富士が資金繰りに窮し会社更生法を申し立てた事件です。比較的最近の事例であり、皆さんもよくご存知かと思います。

過払い金請求は司法書士業界と弁護士業界に一大バブルを巻き起こし、現在は終息に向かっていますが、これしか出来ない無能事務所などでは、依然としてこのビジネスモデルにしがみついているところがあります。大手事務所では、杉山事務所の広告とか見ていると詐欺教唆の要件を満たすのかどうか考えてしまう広告の出し方をしていますね。

閑話休題、武富士は結局、こうした過払い金の支払いに耐え切れず会社更生法を申請。この際問題になったのが倒産時点で過払い金の返還請求をしていない債務者の取り扱いでした。結局武富士のケースでは、大幅に債権届出期間を引き延ばし、期間内に届け出のなかったものについては失効、さらに過払い金返還請求債務は一般債権として取り扱い、大幅な債権カットで更生計画成立という乱暴と言えば乱暴、原則どおりと言えば原則どおりという、言葉ではとても言い表せない思いがこみ上げてくる結果となりました。

この事例から、東電のケースでも下手に法的整理に移行すると泣くのは損害賠償請求権者であること、また倒産手続の運用次第では将来発生する債務をぶっ飛ばすことが出来るということが分かります。


ケース4:カネミ油症事件(問題企業:カネミ倉庫)

カネミ油症事件は、カネミ倉庫が製造した食用油にPCBが混入し、健康被害を引き起こした事件です。PCBを製造したカネカも被告企業ですが、今回はカネミ倉庫のみを対象とします。

カネミ倉庫はこの事件により、他の事例同様に多額の損害賠償債務と被害者への医療費支払い義務を負うことになりました。この医療費支払い義務というのが厄介で、一時金ではなく、毎年発生する費用です。この費用をカネミ倉庫は政府保管米の保管料によって捻出しており、その契約は随意契約となっています。この契約、一時随意契約廃止の流れに沿って取りやめになったこともあるらしいのですが、患者団体の要望で再び随意契約が復活。現在に至っているそうです。

事実上、カネミ倉庫は国が発注支援を行うことで生き延び、被害者に賠償を行っている企業であり、完全なゾンビ企業と言えます。しかし、発注支援をしないと生きていけないことも事実であり、そうなれば患者への支払いも出来なくなるという実に厄介な袋小路に入り込んでしまいました。

この事例からは、賠償金の支払い方法を誤ると企業そのものが破綻、またはゾンビ化するということが分かります。


まとめ

著名な事例を採り上げましたが、社会問題を引き起こした企業の中には裁判で勝利することによって自らの支払い能力の範囲内に賠償金を抑制することに成功している企業もあります(イタイイタイ病、四日市ぜんそくなど)。

しかし、今回の東京電力の事例は、既に東京電力の支払い能力を超える賠償金が支払われており、またその支払いは妥当なものであるとshasaiwatchは考えています。そのため、今回の事例は支払い能力を超える支払いが必要となった企業に限定しています。また、こうした劇的で大きな事例に限らずとも、より賠償規模の小さい事件であっても、企業規模によっては支払い能力を超えることがままあり。

例えば、フーズ・フォーラス(殺人ユッケ食中毒事件)は事業譲渡を実施し、その後特別清算によって倒産しています。おそらく私的整理によって我々の眼の届かないところで賠償金を支払い(あるいは支払いきれず)、全ての事業を売り払って倒産したものと考えられます。私的整理は取り扱いが難しいですが、近年は私的整理ガイドラインや事業再生ADRなど、私的整理分野も発展してきており、こうした知見も東電処理に応用できるかもしれません。

次回(最終回)は「東京電力と福島原発の財務的処理方法。利点と欠点」としてこうした事例をもとに東電の財務的処理方法を探っていきたいと思います。お楽しみに!

PageTop

【総力特集】東京電力は逝ってしまうのか 第1回

東京電力の法的整理論や分社論が騒がれています。東京電力は倒産してしまうのか、また、原発事故を終わりにするためには東京電力をどうすべきなのか。当ブログでは総力特集として東京電力を全3回に渡って採り上げます。

特集内容
第1回:東京電力の財政状態と問題点
第2回:大事件を起こした企業:過去の事例研究
第3回:東京電力と福島原発の財務的処理方法。利点と欠点

今回は第1回:東京電力の財政状態と問題点についてです。まずは東京電力の平成25年度半期決算を見てみましょう。
ソースはEDINET

平成25年9月期 中間決算の貸借対照表(単位:十億円)
総資産14,565
原発関連資産3,309
(原発設備)730
(核燃料)806
(核燃料サイクル積立金)1,032
(未収原賠機構交付金)741
それ以外の資産8,256
総負債12,783
原発関連債務2,955
(核燃料サイクル引当金)1,144
(損害賠償引当金)1,115
(災害損失引当金)696
それ以外の負債9,828
純資産1,782

平成25年9月期 中間決算の損益計算書(単位:十億円)
売上高3,216
営業費用3,049
営業利益167
営業外損益-25
経常利益142
特別利益741
特別損失253
税引前当期利益630
当期純利益616



雑に計算してみました。固定資産仮勘定1兆971億円や資産除去債務8343億円は原発関連から除外していますが、原発関連のものが結構な割合を占めることは確実です。

この決算内容には、賠償金や除染費用が全て計上されているわけではありません。除染費用を現実路線(年間20ミリシーベルト)に転換したと仮定しても、東電に請求されれば多額の債務を計上することになるのは確実であり、また原発関連資産で福島第一原発、福島第二原発関連の資産が依然として計上されている可能性があること、柏崎刈羽原発の再稼動も未定であることなどを考えると、東京電力は実質的に大幅な債務超過に陥っていることは確実です。

また、事実上の簿外負債というべきものもあります。原子力損害賠償支援機構による交付金です。

現在、原子力損害賠償支援機構は、東京電力が損害賠償金を支払うにあたって必要な資金を交付する法人であり、これまでに東京電力に対し支払った交付金(交付国債)は3兆円を超えます。さらに機構は東電の株式1兆円を引き受けており、合計で4兆円以上の資金援助を実施しています。

東京電力は、これらの交付金を全て利益計上(優先株はのぞく)していますが、実際にはこれ、特別負担金という形で返済する必要があります。つまり、実態が債務超過である上に、3兆円以上の簿外負債があるってこと。どうすんだこれ。

また、有利子負債は8兆円存在しており、そのうち社債が半分以上を占めると見られます。社債はおそらく、一般担保付であり、先取特権が付与されているでしょう。ざっと4兆円の有利子負債が一般担保付だと推測しておきましょう。これも問題になっているところです。後で述べる東電の法的整理の際にこれが障害になるのです。

しかし、朗報もあります。事故関連の賠償金支払いを除いた営業キャッシュフローが黒字に転換しており、半年で3000億円程度の営業キャッシュフローを計上することが出来ました。フリーキャッシュフローも黒字転換しており、今後、原発再稼動などで業績が一層好転すれば、さらにキャッシュフローの上積みが出来、賠償金や事故の処理費用等の支払いが可能になる見通しが、ようやく立ってきたと言えます。何年かかるか分かりませんが

なお、当期の賠償金の支払いについては、半年間で8,727億円を支払い。一方で8,170億円の原賠機構交付金を受け取っているため、実際の賠償金の支払いは依然として借入(交付金と称する利益計上)に依存しています。

東京電力の財務内容まとめ
・東京電力の半期決算は、本業の収益力が大きく拡大。原発再稼動なら事故の財務的収束に向け大きな一歩か
・黒字転換を受け、財務的処理に向けて「次の一手」が求められる段階にきている
・財務内容はズタボロ。しかもこれから廃炉費用や損害賠償が追加で発生。交付金の返済も必要
・議決権の過半数を国が握っており、政治リスクが極めて高い。株も社債も投資判断は買い非推奨
・問題の規模は過去に社会問題を引き起こした企業全ての合計を上回る。問題はとてつもなく複雑

こうした現状を受け、問題解決の手法を探っていきます。次回は「過去に事件を大事件を起こした企業の研究」です。お楽しみに!


PageTop

【特集】ワタミは逝ってしまうのか



先日、リアル友人とワタミの労働環境の話になり、あれはまずいよね~という話をしていたのですが、その時に友人が言った「経営やばいからああいうことしてんじゃない?」という一言が気になりました。そして調べてみたところ、ワタミ面白そうじゃんということで、この記事が出来上がりました。亡くなった彼女も期待してくれていると信じています。

EDINETとワタミのIRから取ってきた過去5年間のワタミの経営指標の推移はこんな感じです。

2009/32010/32011/32012/32013/3
売上高111,291115,420123,877140,197157,765
経常利益6,1066,3496,7087,8088,021
当期純利益2,5613,2572,8283,4183,540
当座資産8,98010,73111,05514,87413,197
リース債務5,54412,12923,26236,00147,266
有利子負債13,69419,10718,43413,1919,617
純資産額22,79425,34027,33329,35032,046
総資産額70,22977,79593,534111,425124,680
ROE11.2%12.9%10.3%11.6%11.0%
ROA3.6%4.2%3.0%3.1%2.8%
当座資産月商倍率0.97ヶ月1.12ヶ月1.07ヶ月1.27ヶ月1.00ヶ月

あまり良くないなという印象です。ROAが低く、かつ下落傾向にあります。売上は5年間で40%増加していますが、経常利益の増え方はそれほどでなく、限界収益逓減の法則にはまり込んでいるのか、あるいは既存店舗の落ち込みが新規出店や新規事業の利益を食ってしまっているのかブルー・オーシャン的な成長企業というよりも、成熟・衰退市場でシェアを拡大する戦略を取りながらもがくレッド・オーシャン企業という印象です。

踠く者といえばベルセルクの主人公の称号?ですが、踠く企業は勘弁して欲しいものです。ベルセルクとハンターハンターはいつ連載再開するのでしょう。 どちらも作者の才能が枯渇したけど人気が下がらないので逃亡という説を信じています。

閑話休題、ワタミの財務分析ですが、他企業との比較をしようということでモンテローザをベンチマーク対象にしようとしたのですが、モンテローザは非上場で有価証券報告書がないということに今さら気づきました。同じ業態で同じぐらいの規模ということで使いやすいと思ったのですが・・・しょうがないのでコロワイドと大庄を使って比較してみます。 なお、ワタミとコロワイドは平成25年3月決算、大庄は平成24年8月決算を使います。

ワタミコロワイド大庄
売上高157,765128,38878,014
経常利益8,0213,4452,059
当期純利益3,5401,608884
当座資産13,19720,43813,749
リース債務47,2663,5741,610
有利子負債9,61773,50912,294
純資産額32,04623,42426,397
総資産額124,680135,47750,547
ROE11.0%6.9%3.3%
ROA2.8%1.2%1.7%
当座資産月商倍率1.00ヶ月1.91ヶ月2.11ヶ月

先ほど、あまり良くないなと言いましたが、収益性について言えば、ワタミはまだマシです。コロワイドはもっと悪いし、大庄よりもワタミの方が収益性がいい。さらに分析を進めます。営業利益までの費用を原価率、人件費率、店舗・管理費率に経費を分解。

ワタミコロワイド大庄
売上高157,765128,38878,014
売上原価70,88447,81327,697
原価率44.9%37.2%35.5%
人件費28,73728,45025,443
対売上高人件費率18.2%22.2%32.6%
人件費を除く販管費48,93447,69122,643
対売上高販管費率(除人件費)31.0%37.1%29.0%
営業利益9,2593,4452,230
売上高営業利益率5.9%2.7%2.9%
非正規含む人員数21,39511,0187,733
1人あたり売上高(千円)7,37411,65310,088

あっ(察し)

同業他社と比べたワタミの特徴は、大量の人を雇い、売上の割に低賃金で働かせ、その売上も大して上がっていないという悲惨な状況が挙げられます。ちなみに、ワタミは介護事業と宅食事業があり、売上の半分が介護と宅食ですが、セグメント別で見ると外食事業はさらに利益率が低くなります。ちなみに、介護事業も宅食事業も人件費がかなりの割合を占めることが多い事業なので、ワタミ系列の居酒屋の現場は想像以上に大変なことになっているものと思われます。コロワイドだって大庄だって決して労務管理がいい方の企業じゃねーぞ。

詳細を解説していきます。
ワタミの原価率が高いという点は、値段の割にいいものを出している、モノの割に値段が取れていない、外食・宅食事業のセントラルキッチン等のコストが高い、業務委託社員の人件費を原価に計上しているなどの理由が考えられます。人件費率が驚きの低さなので、人件費の原価算入が最も疑われます。なお、業務委託社員がワタミの従業員数に含まれておらず、原価に算入されているとした場合、1人あたり売上高がさらに減ることとなり、なおも末期的な状況になります。1人あたり売上高の低さは異常な数字です。なお、本当は人時売上高を出したいのですが、そこまでのデータがないのでそれは割愛。

ちなみに、外食産業の収支構造としては、原価・人件費・その他経費を1:1:1とするのが基本で、そのバランスを敢えて崩すことで差別化を図ることが一般的です。その意味では大庄は平均的。コロワイドは店舗にお金をかけ、人にはお金をかけないのかなという印象。ワタミの数字は色々とおかしい。

一方、介護事業や宅食事業は外食事業よりも収益性が高く、ワタミの今後が決して暗くないことを示しています。しかし、この分野の特徴は外食なんて比べ物にならないほど人件費がかかること。さらに肉体労働の割合が多く、かつ低賃金であるため従業員の離職率が高いことでも有名です。今後、ワタミには人材育成や人的資源管理が一層要求されるわけですが、こんな有様で大丈夫なのでしょうか・・・?

色々と述べて来ましたが結論としては、ワタミの収益力の高さは介護事業、宅食事業の収益力の高さに依存しており、外食事業においては同業他社と比べ、収益力は並み程度、労働環境は極端に悲惨ということが分析できます。外食事業は売却または抜本的改革が不可避であり、売却も改革もしないとなると、今後企業の足を引っ張るお荷物になっていくことが予想されます。しかし、外食事業はワタミの創業分野なので、そうなる可能性は高いといえるでしょう。

財務面では、リース債務の多さが目を引きます。これは、ほとんどが介護事業に関するものです。

推測になりますが、ワタミの介護事業は現在うまくいっているものの、もともとワタミ自身、成功する見込みが高いと見て始めた事業ではなく、またその不確実性の高さが銀行筋からも嫌われたのではないでしょうか。結果として資産の多くをリース調達せざるを得なかった。そして、その時のままリース調達を続けている、つまり、ワタミ自身が今後の見通しは不透明であり、自社で資産を抱えるのではなく、リース調達で撤退しやすい環境を作っているということです。

介護事業は収入の多くが介護保険によるもので、これは制度がコロコロ変わる代物です。銀行から資金調達を行うことに及び腰になってもおかしくはありません。労働問題で危険企業扱いされて銀行から借りられないからリースというわけではない模様。銀行とはコミットメントライン契約を締結しているようで、残枠が100億円ほどあるようです。平均月商130億の企業にしては心許ない水準ですが、いざという時に効いてくるでしょう。

ワタミの財務面での問題点は、流動性が低いという点です。何か大きな事件が発生し売上が急減するような事態が発生すると、数ヶ月で資金繰りが詰まる可能性があります。その間に何らかの手を打てればどうにかなるのでしょうが、これだけ叩かれている昨今、食中毒や介護施設での虐待、不正受給等の問題が発生すると、全てが逆回転になる可能性があります。投資するには踏み越えなければならないリスクが結構多い企業だと言えるでしょう。

今回は、話題の企業ということでワタミを取り上げてみましたが、残念ながら?ワタミが今すぐ逝ってしまいそうな気配はありませんでした。しかし、上場企業の割に経営面、財務面での脆弱性が高いことも判明。創業者が参議院に行ってしまった今、果たしてこうした問題を解決してレッド・オーシャンから抜け出し、ブラック企業の汚名を返上できるのでしょうか?

PageTop

【特集】シャープは逝ってしまうのか 最終回

MRI特集の後、コメント欄にスパムが増えました。同時にシャープが潰れてないんだから腹を切れとかいう又吉イエス的なコメントも多くいただくようになり、何の関係があるのだろうかと思う今日この頃、ついにシャープの2013年3月決算が発表されました。さっそく分析です。

過去記事
【特集】シャープは逝ってしまうのか
【特集】シャープは逝ってしまうのか2012年秋
【特集】シャープは逝ってしまうのか2013年冬

シャープのここ4四半期の業績推移です。営業利益段階までですが、大きく利益が回復していることが分かります。
(単位:億円)第1四半期第2四半期第3四半期第4四半期
売上高4586645667836961
売上原価4528617257635717
売上総利益5828410201244
販売管理費99910319931045
営業利益-941-74727199


一方、こちらが貸借対照表の様子です。純資産が大きく減少していることが分かります。
(単位:億円)第1四半期第2四半期第3四半期第4四半期3Q-4Q
総運用25207222042171220877-835
現預金2177221216401919279
売上債権3233406440964242146
棚卸資産5138325834003107-293
その他流動資産3264305734152950-465
有形固定資産8620636660045637-367
その他固定資産2757323731493016-133
繰延資産181086-2
総調達25207222042171220877-835
仕入債務3631388340753651-424
短期有利子負債7061884788629103241
その他流動負債4025381334973921424
長期有利子負債5145289426512331-320
その他固定負債55448944652377
純資産4789227921811348-833

シャープの内容は、決算以上に良くなっていると言えます。最大のポイントは、前回分析時に問題にしたその他流動資産とその他流動負債が戻っており、889億円のキャッシュフロー増加に繋がっている点です。これには2つの可能性があり、1つの可能性は上記2つの科目を魔窟と呼んでいたが実際には魔窟ではなく、疑う必要がないものだったという可能性、もう1つの可能性は実際に魔窟に色々と流し込んでいたが、予想以上に決算が好転したので魔窟から怪しいものを取り除いた可能性です。

どちらの可能性も十分考えられますが、いずれにしてもシャープにとって朗報であることは間違いありません。4Qも最終的に赤字を出しましたが、赤字の内容は訴訟費用の引当金、減損損失、リストラ費用などの特別損失であり、経常利益段階での黒字転換の目処は立ったと言うべきです。

財務内容は相変わらず脆弱な様子を見せていますが、経常利益段階で黒字転換できる見通しが立ったということは、銀行による金融支援が十分見込めますので、とりあえず債権者に迷惑をかける危険性は非常に低くなったというべきでしょう。信用力は警戒水準で推移することになるでしょうが、時間をかけて徐々に好転していくことになるのでしょう。

あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!

『シャープは倒産への階段を登っていたと

思ったら、いつの間にか復活していた』

な・・・何を言っているのかわからねーと思うが、

俺も何が起きたのかわからなかった・・・

頭がどうにかなりそうだった・・・

選択と集中だとかリバイバルプランだとか、

そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。

もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ・・・


シャープ復活の要因は、どうみても円安です。自民党が選挙に勝って、そして世の中の空気は一変しました。円は100円を超え、株価は民主党政権当時の最安値の2倍になろうとしています。半年前には想像さえ出来なかったことが現実に起きています。その一つがシャープの復活と言えるのではないでしょうか。

なお、シャープは銀行筋から来月の短期資金の償還とCB償還のための資金手当てを受けられる見込みになったとか。もはや手遅れ感はありますが、シャープのCBは現在、残存期間4ヶ月ほど、金利は8%~9%程度で取引されているようです。ようやく、リスクとリターンが見合うようになってきた感じでしょうか。

一時期20%だとか100%だとかそういう金利がついていたシャープ債ですが、あの時買っていればとは思いません。当時は本当に死ぬ可能性が高い財務内容でしたし、アベノミクスが始まった後はシャープのCBを買わなくても別に利益の出る銘柄は一杯あったわけで。株も高くなってそろそろ銘柄を厳選して物色する必要がある中では、現在のシャープCBというのは価値がある銘柄だと思います。特に10%超えのシティ24回債をじっと我慢で保有した皆さんなら、きっと満足できるのではないでしょうか。

なお、注意しなければならない点は、シャープの復活は外部環境の変化によるところが大きく、地力が上がったわけではない点です。何か外部環境が大きく変化した際には、シャープは再び生死の狭間をさまようこととなるでしょう。

最後になりましたが、今回で【特集】シャープは逝ってしまうのか シリーズは終了です。またそのうち面白そうな企業を見つけたら分析してみたいですね。

PageTop

【特集】シャープは逝ってしまうのか2013年冬

最近はいい社債どころか新発社債そのものがなく、当ブログも閑古鳥ですね。そんな中ではありますが新しい燃料投下がありました。シャープの四半期決算です。そう、財務分析の時間です。

過去記事
【特集】シャープは逝ってしまうのか
【特集】シャープは逝ってしまうのか2012年秋

今回は、執筆時点で終利26%以上あるシャープ20回CBを購入することを念頭に置いて分析しますが、一見して感じるのは「作ったなー」感です。例えば、自己資本比率が10%スレスレで維持されています(2Q:10.26%→3Q:10.04%)。自己資本比率10%に何か意味があるのかと言われればないのですが、取引銀行から「なんとしてでも10%を死守しろ」と言われているのかも知れません。自己資本比率が2桁なのと1桁なのとでは対外的な見栄え(特に週刊誌等で「自己資本比率1ケタ台!」などと書かれるのが嫌だとか)もありますし、気合を入れた印象があります。

こちらがここ3四半期のシャープの損益計算書(営業利益まで)です。(参考:EDINET 及びシャープ決算短信)
(単位:億円)第1四半期第2四半期第3四半期
売上高458664566783
売上原価452861725763
売上総利益582841020
販売管理費9991031993
営業利益-941-74727

一方、バランスシートの状況はこんな感じです。合計額が合わないけど、四捨五入のせいだって、気にしない!(参考:同上)
(単位:億円)第1四半期第2四半期第3四半期3Q-2Q
総運用252072220421712-492
現預金217722121640-572
売上債権32334064409632
棚卸資産513832583400142
その他流動資産326430573415358
有形固定資産862063666004-362
その他固定資産275732373149-88
繰延資産18108-2
総調達252072220421712-492
仕入債務363138834075192
短期有利子負債70618847886215
その他流動負債402538133497-316
長期有利子負債514528942651-243
その他固定負債554489446-43
純資産478922792181-98


まず何より気になるのは、謎の売上総利益急回復です。売上が増えたにも関わらず売上原価が減少。ここまで急回復するのは異常値です。もしもこの決算が真実ならば、この3ヶ月間の間にシャープには何か大きな改善があったはずです。対外信用を回復したいシャープは、こうした良い事実があれば必死でそれをアピールするはずですが、決算短信や記者発表等を見ると逆に、売上総利益の急回復から故意に目をそらさせようとしているように見えます。販売費・一般管理費がそれほど減っていないのでアピールポイントはこちらのはずです。

また、過去3ヶ月は景気後退期でした。最後の最後で円安に振れましたが、それが今回の決算にどれだけ反映されたのかと考えるとどうでしょうか。こうした中で売上が拡大したというのも本来ならば大ニュースのはずです。売上と売上総利益は疑ってかかるべきかもしれません

貸借対照表に目を移してみましょう。もしも損益計算書が真実だとすると、こういうストーリーになるはずです。

「営業利益が黒字化し、フリー・キャッシュフローは減価償却費(有形固定資産減少額の360億円程度)を合わせ400億円程度の黒字。支払利息が88億で有利子負債が200億ほど減っているので現預金は3ヶ月前と比べ100億増える。」

・・・・・・

増えてねーじゃねーかコノヤロー!

コノヤロー!!!

コノヤロー!!!!!

原因は、その他流動資産の増加とその他流動負債の減少によるものです。これらの科目は支払った費用を「やっぱこれ資産ね」と言って計上したり、発生したが支払っていない費用を「いやまだ計上しなくていいから」と言って計上しなかったりすると変動し、財務分析上は魔窟になりがちな科目です。シャープは遂に魔窟に足を踏み入れたようです。会計上も議論の多い分野で、監査法人も銀行もこのあたりは結構頭を悩ませるところです。

「3Qと4Qが営業黒字にならないと融資打ち切り」という真偽不明の噂が聞こえる中で営業利益がギリギリ黒字、自己資本比率もギリギリ10%、そして魔窟から聞こえる不気味な唸り声、証拠は全くありませんが、ゲロ以下のにおいがプンプンする決算内容でした。ルールの範囲内なのかもしれませんが、これで回復してきたと言われても、養豚場のブタでもみるかのように冷たい、残酷な目で見てしまいます。「かわいそうだけど、あしたの朝にはお肉屋さんの店先にならぶ運命なのね」って感じの。

まあ、普通に考えて社債を買っていい相手ではありません。3Qはキャッシュフロー計算書の公開義務がないので助かっていますが、たぶん赤字でしょう。シャープは依然、営業キャッシュフローが黒字転換していないにも関わらず、8800億円の短期有利子負債を償還しなければならない状態であり、当面1年間生き残れるかどうかさえ、銀行が8800億円の支援を実行するかどうかにかかっています。

8800億円と書くと何となくどうにかなりそうですが、日本振興銀行が逝った時の総預金量より多い金額です。銀行だってハイそうですかと出せる額ではありません。希望の光は円安と政府による設備買取ですが、果たして9月に間に合うのか。そういうことを考えると、現在のシャープのCB価格は割高で、購入すべきではないと言えます。ここ最近、買うか買うまいか迷っていましたが、見送りすることをshasaiwatchは決めました。2013年3月決算が出たらまた考えましょう。

PageTop

パナソニックは逝ってしまうのか2012年秋

パナソニックが2年で1兆4000億円を吹き飛ばすなどと話題になっており、財務分析して欲しいという要請が来ているのでやろうと思います。なお、3ヶ月前は「【特集】パナソニックとソニーは逝ってしまうのか」のとおり考えていました。

パナソニックの半期決算を見て感じたことは、報道される内容よりもはるかにパナソニックの経営状態は良いということです。純損失は半年で6850億円ですが、営業利益が873億円の黒字で、シャープとは同列に扱えません。パナソニックは本業で利益を出しているということです。赤字の原因は、繰延税金資産の取り崩しとリストラ費用、そしてのれんの取り崩しによるもので、キャッシュフローに与える影響がないものがほとんどです。

実際、キャッシュフロー計算書を見ると、営業キャッシュフローは黒字で、減価償却費相当額の設備投資を実施しており、シャープのような資金を確保するための資産売却や資金を確保するための在庫の削減などが行われておらず、危機的状況とは言えません。なお、当座比率は53%、流動比率は95%と健全性に欠ける状況なので、余裕たっぷりというわけでもない上、棚卸資産が増えてきており資金を食っています。改善が必要な状況ではありますが、シャープほど危機的な状況にはありません。

銀行からの支援も継続的に得られているようで、6000億円のコミットメントライン契約が締結されています。ということは、この短期借入金と1年以内償還の社債はほぼ全て、コミットメントライン契約を使えばどうにかできてしまうというわけで、何かとんでもない事態が起きない限り、パナソニックが1年以内に倒産する確率は非常に低いと思われます

当面の資金手当てが出来てしまっているので個人向け社債の起債などはないと思いますが、格下げもされたことですし、いい条件で買えそうですね。投資対象として面白くなってきたと言えるのではないでしょうか。

PageTop

【特集】シャープは逝ってしまうのか2012年秋

相変わらずシャープが悲惨な決算を叩き出しながらも潰れていません。目指してる未来は会社更生なのか。前回の記事「【特集】シャープは逝ってしまうのか」が好評でしたので、半期決算が出てきたということで再度分析してみたいと思います。

なお、shasaiwatchはブルーハーツを聴きながらこの記事を書いています。

1.NO NO NO(対マスコミ的な意味で)
マスコミ報道では、繰延税金資産の取り崩しで下方修正でシャープ死亡などと書かれていましたが、第一四半期決算を見た時点で下方修正が来ない方がおかしいと考えるべきです。下方修正は想定の範囲内です。
シャープの半期決算でむしろ注目すべきは、シャープが経営改善に必死で取り組んでおり、プラズマクラスター付きコピー機を売るだけのバカ揃いではないことを証明していること、そしてそれにも関わらず、シャープは倒産に向かって一層進んでいるということです。

2.人にやさしく(頑張れ的な意味で)
第一四半期決算と半期決算を比較すると、7-9月期の売上は6455億円であることが分かります。4-6月期に比べ40%の売り上げ増であり、後述する在庫変動の分もあるのでしょうが、ぐっと売上を伸ばしてきました。売上総利益も284億円確保しており、売上総利益率は4.4%。依然として危険水準ですが、4-6月期の1.2%と比べると改善が見られます。
販売費及び一般管理費は減っていませんが、変動費のものもあるでしょうし、営業利益段階で200億近く赤字を減らしたことは一定評価が出来ます。シャープの半期決算は、相変わらず転落しつつあるものの、底に向かいつつあるのでは?と思わせる内容です。このわずかな光明をとらえ、頑張って黒字転換してほしいものです。

3.首吊り台から(シャープの現状的な意味で)
なお、財務内容は一層悲惨なことになっています。流動比率は76%にまで落ち込み、当座比率も38%と第一四半期と大差ない状況です。自己資本比率はいよいよ10%ギリギリとなり、経常利益が現状のまま推移すれば、あと7ヶ月で債務超過に転落します。もはや主文後回しの状態。あまりの惨状に例のデスブログを調べてみたところ、「目のつけどころがシャープ」と3回も書かれていたことが判明。これは死ぬ。むしろここまでよく生きた。

4.情熱の薔薇(経営陣の意地的な意味で)
貸借対照表を詳しく見ていくと、資産側で鴻海に堺工場を売って有形固定資産を減らしたり、在庫を2000億円近く減らしたりとかなりの経営努力が窺えます。6455億円の売上で在庫減少が2000億円というのはとんでもない数字です。売却した堺工場の在庫だったり、減損だったりするのかもしれませんが、仕入債務があまり変動していないことを考えると、純粋に処分したと考えるのが適当なんだと思います。
そう考えると売上と売上総利益のうち、在庫処分に伴うものが相当にあるということでしょう。AQUOSが投げ売り中なんでしょうか。そろそろテレビ買い換えたいんですけど今ならお得なんでしょうか。いずれにせよ、経営陣のキャッシュフロー確保に向けた努力が本気であることは分かります。

5.TOO MUCH PAIN(生き残り策的な意味で)
一方負債側では、ついにCB2000億円が長期から短期に振り替わり、1年以内に8700億円の有利子負債を償還しなければならないという現実が見えてきました。ちなみに当座資産は6300億円、総資産ですら2兆2000億円しかありません。
銀行が先日実施した緊急融資の償還期限が来年6月末らしいので、当面の資金繰りの山は平成25年6月、その次の山は25年9月のCB償還です。CPの発行ももう無理でしょうし、この段階で銀行の支援が得られなければシャープは倒産します。
この先生きのころうと思ったら、従業員のリストラも大々的に行わなければならないでしょうし、取引先にも無理を聞いてもらわなければならないでしょうし、銀行にも貸せない金を貸してもらわねばならないでしょうし、株主にも第三者割当増資、場合によっては身売りを提案しなければならないでしょう。
なお、shasaiwatchはシャープ生き残りの最終手段として、MSCBの発行を支持します。会社更生法で紙屑になるのと死ぬほど希薄化して大損こくのとどっちがいいのだと株主に問えば、株主はMSCBの発行を認めざるを得ないでしょう。

6.皆殺しのメロディ(投資判断的な意味で)
さて、当ブログの読者としては死ぬほど下がっているシャープのCBを買うべきかというところなんでしょうが、現時点では買うべきではないと考えます。シャープが自ら手を上げない限り、平成25年6月までの資金繰りはどうにかなるでしょう。しかしその間、CB価格は下落する傾向にあるでしょうし、銀行がもはやここまでと言ってしまえばシャープは終了です。
むしろ買うならば来年、銀行の方針をじっくり見た上でギャンブルするのがオススメです。それでも逝ってしまうことはあるんでしょうが、うまいことMSCB発行なんてことになってくれれば株価は下がりますが、CBホルダーはヒャッハー出来ます。シャープCBへの投資はあくまで短期の火遊びとすべきでしょう。うかつに手を出すと株・CBとも皆殺しになりかねません。


CD/ザ・ブルーハーツ/EAST WEST SIDE STORY/AMCW-4230

価格:3,568円
(2012/11/3 12:39時点)
感想(0件)


PageTop

東京電力の社債を買いたいという神経が分からない

原発事故以降、東京電力の社債についての分析をコメントで要請されることが増えてきました。結論から言うと、現在の金利条件で東電債を買うなどありえないです。

三菱UFJ証券のサイトで現在、既発債として東電債が上がっていますが、利回りは残存期間2.04年のものが2.056%、残存期間7.61年のものが3.843%(いずれも税引き前)となっています。格付けは国内2社からA格とBBB格を得ていますが、海外2社は当然のように投機的格付けを付与しています

まあ正直、それでも財務内容と今後のキャッシュフロー次第では償還される見通しが立つこともあるのでしょうが、財務内容はボロボロです。平成24年6月の第一四半期時点で、連結総資産14.5兆円に対し純資産は5000億円しかありません。

余談ですが、一時期反原発派が「東電の隠し財産15兆円!」などと吠えていましたが、どうやらこの連結総資産が根拠のようだったようです。確かに23年6月時点で東電の総資産は15.5兆円あったわけですが、その中には核燃料とかも8500億円ぐらい含まれてるんですが、いいんですかねえw

閑話休題、東電の財務内容の問題点は原子力関連の「不透明な資産計上」にあります。実態としては大幅な債務超過の状態にあり、しかも赤字が止まる見込みがありません。

東電の固定資産には、「原子力発電設備」「固定資産仮勘定」「核燃料」「使用済核燃料再処理等積立金」「未収原子力損害賠償支援機構資金交付金」といった原子力関係の不透明な資産が多額にあり、その総額は5兆円にも及びます。これらの資産は、事故前であれば十分な資産価値があると認められたものかもしれませんが、事故後においては価値のあるものとみなしうるかどうか疑問があります。

柏崎刈羽は再稼動が前提になっているようですので、そっちの資産性は認めるとして、福島第一、福島第二の資産は減損ないし災害損失で全て費用にしたのでしょうか?過去の決算を見る限り、事故後に計上した災害損失等では到底足りているとは思えません。

原子力損害賠償支援機構資金交付金も、支援が決まった時に2.8兆円以上を一度に利益計上し、お金が入るたびに未収入金を取り崩すという処理をしていますが、その処理は適正と言えるのでしょうか。東電を債務超過にしないという政治判断が働いたとはいえ、政治が「東電潰せ」の方向に動いた時、未収入金に回収見込みはあるのでしょうか。

というわけで、5兆円全てが吹き飛ぶことは考えられないものの、そのうちのわずか10%が吹き飛ぶと東電は債務超過に転落しますし、福島第一原発関連の固定資産が減損されているとは考えにくいことから、その可能性は極めて高いものとshasaiwatchは判断します。廃炉費用も足りないでしょうし。

なお、負債側では東京電力は、原子力損害賠償費として平成24年3月期に約2兆5000億円を計上しました(もっとも、ほとんどはこの引当金に計上されているようで、実際に支払った額はキャッシュフロー計算書にある通り、5662億円です)。その後も費用は継続的に計上されているようですが、とりあえず残りの損害賠償予定額は1兆8000億円であると考えているようです。この額の合理性については色々と意見があるでしょうが、とりあえず計上しておく額としては妥当だと思います。ただし、除染費用についてはまだ東電が払う額が分からないのことで未計上です。アカン。

こうしたボロボロの財務内容の中、東電は赤字を垂れ流しています。四半期経常損失は1240億円、通期予想でも4250億円の赤字を予想しており、値上げをしないと倒産は必至でした。なんとか「柏崎刈羽の再稼動を前提に」8.47%の値上げを認可してもらったらしいですが、これではほとんど利益が出ず、再稼動したとしても賠償金を支払う原資がありません。

何十年かかってでも賠償金を払うべきだという考えはもちろんあるんでしょうが、こういう解決法を選んだ場合、従業員のモチベーションと設備の老朽化という問題が襲ってきます。従業員は何のために働くのでしょう?彼らは賃金カットを受けています。職業選択の自由がある社会で、会社の不始末の責任を従業員の給料から出させるのは最悪の解決法です。従業員の多くは、同業他社への転職を考えたり、技術を持って海外へ逃げたり、あるいは雇用が継続されていることのみを働き甲斐にするでしょう。また、新卒採用等の新規採用も困難になります。かつて自衛隊の子息を差別したような人たちが東電の従業員を、職業を理由に差別しています。そうした逆境の中でなぜ人はその会社にあえて入って働くのでしょう?

低賃金の上、所属する誇りも得られない組織では、人は真面目に働こうとしません。そのうち設備が古くなってきて、レベルの低い人間と旧式でボロボロになった設備で関東地方の電力供給が支えられるという図式が出来上がるわけです。胸熱。やっぱり賠償金を優先債権にして一度倒産させるべきでした。

だいぶ話がずれましたが、こういう状況なので東京電力は政府が生かしているゾンビ企業と言ってもいいです。社債投資家としては社債が償還されればそんなことはどうでもいいわけですが、生きるか死ぬかがそもそも政治リスクの企業は、政治や世論の動きが変われば一瞬で倒産します。かつて武富士の悲劇を見た我々は、あれと同じレベルの政治リスクに晒されている東京電力の社債を買うべきではありません。少なくとも、それ相応の(ジャンク債にふさわしいレベルの)金利をつけるべきではないでしょうか。

PageTop

【特集】パナソニックとソニーは逝ってしまうのか

今週は新発社債の情報もなく平和な1週間でした。そこで前回の記事「【特集】シャープは逝ってしまうのか」が好評だったので、コメントで言及のあったパナソニックとソニーについて分析してみることにしました。

まずはパナソニックから。

パナソニックは、平成23年3月決算時点であった9700億円の現預金が平成24年6月四半期決算時点で5300億円まで減少しており、流動比率は100%ギリギリ、当座比率も50%台とシャープよりはマシなものの、資金繰り状況は厳しい状況にあると言えます。ただ、在庫水準は四半期売上の半分以下で概ね適正水準にあり、短期の有利子負債も6000億円とシャープに比較すれば相当に余裕があります。

売上総利益率も大幅に低下しているわけではなく、営業利益も平成24年3月通期で437億円のところ、平成24年6月四半期で386億円を確保、平成23年3月通期の営業利益3000億円には遠く及ばないものの、どうにかこうにか自力で存続していけそうです。今後は有利子負債を圧縮すべく尼崎工場の売却や不採算事業からの撤退など、適切な措置を講じていけば大幅な外部環境の変化がない限りは生き残っていくでしょう。欧州・中国危機は間違いなくリスク要因ですが、営業キャッシュフローも黒字転換しており、明日をも知れぬ命というわけではありません。ただ、個人向け社債を出してきたら判断は期間と金利次第。無リスクではないです

この状況から判断される当面の戦略は、キャッシュフローを大事にして設備投資を抑制し、赤字部門を廃止して有利子負債を削減。それに合わせて今後のリスクに対応すべく新興国における市場開拓や先進国におけるイノベーションを考えていくことでしょう。パナソニックの経営陣がそれが出来ないほどのアホ揃いでないことを祈りたいですね。

次にソニーです。

ソニーは金融部門があるため、連結財務諸表ではソニーの製造業としての実態が分かりにくくなっています。金融部門であるソニーフィナンシャルホールディングスは健全経営を続けているため、どうにかこうにか分析してみることとします。

金融ビジネスを除いたソニーの売上高は、平成24年6月四半期時点では下げ止まっており、3割減となっているシャープと比べかなり踏みとどまっていると言えます。一方、金融ビジネスを除いた営業利益段階では419億円の赤字(前年同期の赤字額25億円)となっており、収支は一層悪化。金融の黒字が本業の赤字を埋めるという構造が見えます。このままでは前年並みの赤字を計上する可能性もあり、早急に本業を建て直すことが求められています。

気になる点としては、棚卸資産が1000億円以上増加しており、売上の2か月分に達しているということ。正直、あまり気分がいいものではありません。PS VITAが倉庫に山積みなんていう事態になりかねません。まあ、昨年も第1四半期に在庫を積み上げ、最終的に決算時点では大きく変わらなかったので、これはソニーのやり方なのかもしれませんね。

なお、流動比率は金融部門(特に預金)のため恒常的に100%未満で推移しており、なかなか分析が難しいのですが、とりあえずソニーも現預金が平成23年3月決算時点の1兆円から6500億円に減っていることは注目しておくべきでしょう。ただ、ソニーのいいところは短期の有利子負債が4300億円でシャープやパナソニックに比べて少なく、さらにソニー単体としてみた時、ソニーフィナンシャルホールディングスの株式が時価で3500億円あり、いざいざこいつを市場で売り飛ばせば当座の資金は確保可能というところです。

ソニーの取るべき戦略は、今すぐ赤字垂れ流しを止め、事業の再構築を図ることです。最悪、本業を事業売却して映画や音楽、金融など収益の出る分野のみで小さく生き残ることも考えなければなりません。

ソニーが今後、かつての栄光を取り戻せるかと言われれば、shasaiwatchはGKでないのでどうか分からないと答えますが、収支は厳しい情勢が続いているものの換金可能な資産が多いため、早期に倒産するかと言えばおそらく、しないでしょう。いい条件で個人向け社債が出てきたら買いたいですね。

PageTop

【特集】シャープは逝ってしまうのか

シャープが揺れています。目指してる未来は倒産なのか。今日はいい社債がなかなか出てこないので特集ということで、シャープの決算内容を分析してみました。

まずは損益計算書から。シャープの平成24年3月決算と、6月四半期決算を見たところ、シャープは3月決算時点で、売上が3兆円から2兆4000億円と、対前年比2割減になっていることが分かります(連結ベース)。さらに6月四半期では、そこからさらに3割、売上が下がっています(四半期6403億円→四半期4586億円)。シャープの売上は2年前の5~6割で推移してるということです。

また、前年度は1年間で4000億円の売上総利益がありましたが、今期は3ヶ月でわずか57億円です。売上総利益率はなんと驚きの1.2%!製造業の売上総利益率としては驚異的な低さで、深刻な売上減少にも関わらず、固定費の削減が進んでいないことが分かります。

売上総利益が57億円しかないとなると、もはや固定費をいくら削っても無駄で、昨年1年間でシャープの営業赤字は375億円だったのに対し、今年は「3ヶ月で」941億円の赤字という結果になりました。社員全員でアフィやってた方がマシなレベル。

とはいえ、ヒット商品に恵まれず不遇の時期を過ごすのはどの会社にもあることです。問題は、次のヒットを出すまで会社が持つのかという話です。経営体力を知るべく次は貸借対照表に目を向けてみましょう。

嗚呼・・・

流動比率が100%切ってる・・・

当座比率は37%しかない・・・

シャープの6月四半期決算では、流動比率が100%を割り込み、当座比率も37%ともはや瀕死です。決算書に死相がとかそういうレベルではなく、空には死兆星がギラギラ輝き、ロウソクの炎は風速100mに晒され、お迎えがドアをドンドン叩いてるレベルです。これは死ぬ

しかも、有形固定資産の減少額が100億円しかありません。昨年2500億円の減価償却費を計上した企業です。少なく見積もっても四半期で500億円は減価償却しないといけないはず。ということは・・・この期に及んで数百億規模の設備投資を続けてるってことです。しかも3ヶ月で。誰か止める奴いないのか。

ちなみに、先ほど営業赤字は3ヶ月で941億円と言いましたが、当期純損失は1380億円です。この赤字を誰がどうやって埋めたかという話なんですが、借入金で埋めています。しかもほとんど短期借入金。シャープの資金繰りはもうボロボロ。報道によると、色んな資産を投売りしているようですが、在庫水準もとうとう四半期売上を超えるという有様で、倉庫には大量のAQUOSが積み上がっているのでしょう。最近の報道では、シャープは新たに650億円のつなぎ融資を獲得したとされていますが、はっきり言って1ヶ月分です。ちょっと資金繰りが狂ったらそんなお金飛んでしまいます

既に報道されていることですが、シャープに必要なのは早急に在庫を投げ売りすること、工場や設備を売却して手元資金や借入金の返済に充てること、他にも換金できる資産があれば即座に換金すること、そして資本提携と言わず早々に身売りすることです。

社債関連では、シャープはCBを出しています。1年と少し後に償還ですが、残高は何と2000億円超。短期の有利子負債が7000億円あるのに、さらに2000億円が乗っかってきます。乗り越えられる気がしません。正直、次の金曜日の市場が閉まった後に保全命令が出されてもおかしくない状態なのに。

shasaiwatchは、シャープが倒産する可能性は極めて高いと予想します。CBが極端に値下がりした際にギャンブルするのは止めはしませんが、乗り越えられるとは到底思えません。株式は早々に売却し、シャープに対し与信のある人は回収を図った方がいいでしょう。

PageTop