旧年中はひとかたならぬご厚情を賜り、誠にありがとうございました。本年も相変わらず、よろしくお願いいたします。
さて、2012年は信用不安に始まり先行き不安に終わるという年でした。足元では政権交代による景気浮上観測や米国における「財政の崖」問題の回避による円安・株高が見られますが実体経済はリセッション方向に動いており、予断を許さない状態が続いています。また2012年は指導者交代の年と言われていましたが、極東では北朝鮮に始まり、日本、中国、韓国、台湾と全ての主要国で指導者が交代しました。アメリカ大統領選挙でオバマ大統領が再選されたため総交代には至りませんでしたが、国際関係も大きく動き出しそうです。
そんな中、個人向け社債市場は欧州の信用不安やリーマン・ショックを受けて邦銀が大量発行した劣後債の借換などから発行は大きく増えました。2012年の個人向け社債の発行総額は2兆2206.09億円となり、発行本数は同時起債を含めて120本といずれも2年連続で大幅に増加しました。内訳は下のグラフの通りです。
銀行債は、邦銀が発行した社債です。16本の社債が起債されましたが、最も起債額が多かったのは三菱東京UFJ銀行で、3本3470億円を記載しています。なお、三菱UFJフィナンシャル・グループは傘下の三菱UFJ信託銀行や中京銀行を含めれば4320億円を起債しており、銀行債の起債額の55%以上の、全体で見ても20%近いシェアを獲得しました。
サムライ債は、主に外国銀行が発行した社債です。8ヶ国の発行体が69本の社債を発行し大変賑やかになりました。2012年はインド輸出入銀行が個人向けに起債するなど新興国の社債も出てきており、今後の拡大が期待されます。最も起債額が多かったのはバークレイズの1851.4億円、最も起債本数が多かったのはモルガン・スタンレーの16本でした。多すぎw
証券債は、国内の証券会社が発行した社債ですが、2012年は野村ホールディングスとSBIホールディングスのみの11本の起債にとどまりました。しかし、当ブログ的に最も盛り上がるのはここだったりします(笑)。
鉄道・電力債は鉄道会社と電力会社が発行した起債で、鉄道会社が4本、電力会社が4本起債しました。社債としての旨みはほとんどありませんが、電力会社の経営状態が悪化しており分析する面白さがあったり、鉄道会社の起債には抽選で旅行券が当たったりするのでそれはそれで面白い分野です。
事業債は事業会社が起債した社債で、2012年は10本が起債されました。うちオリックス債が6本を占めており2012年は事業会社による起債は低調だったということが出来ます。
その他社債には、投資法人債、ポーランド国債、財投機関債、特定目的会社による証券化社債が入りました。
2012年の個人向け社債市場を振り返ると、いつ終わるとも知れぬ国債バブルの中、金融緩和が推し進められ徐々に欧州危機が静まっていき、起債条件が悪くなっていくという「早い者勝ち」の1年だったということが出来ます。発行体にとっては我慢したもの勝ちだったのでしょうが、買う側にしてみればバブルが終われば債権安、買わなければ好条件の社債を見逃しという大変な1年でした。今年1年の間に好条件の社債を仕込めた人は勝ち組と言えるのではないでしょうか。
こうした状況の中、2013年に突入していくわけですが、2013年は当面、財政の崖回避に伴う米国景気の安定感や安倍新政権による財政支出拡大期待(あるいは懸念)から高金利の社債が起債されやすい状況になると予想します。特に消費税増税を控え、企業の資金調達意欲が活発化する可能性があるほか、金利上昇に対するリスクヘッジのため、事業会社による起債が期待できるでしょう。
一方、邦銀、外銀による起債意欲は一巡し低下する見通しであり、全体として2013年の個人向け社債市場は縮小すると思われます。しかしながら、前述の通り事業会社による起債意欲が高まる見通しであることから発行体は多様化するものと見られます。
なお、当ブログ読者最大の関心事であろうハイパーインフレは当面数年間は起こりません。その理由として民主党政権、いやむしろ野田内閣の最大の功績である消費税増税法案が成立していることから、当面数年間は政府に債務を返済する意思があることを国内外に示すことが出来ているためです。なお、このシナリオのリスクは、何らかの理由(おそらく人気取り)により消費税増税法案を凍結し国債の日銀引き受け等の放漫財政に走り、債務償還の意思なし(あるいはインフレによる債務償還を企んでいる)と市場に思われることですが、あっぱっぱー揃いの国会議員連中といえどもさすがに政府の中枢を占める連中はそこまでバカではないでしょうから、当面数年間、つまり消費税増税の効果が切れるまではハイパーインフレは起こりません。
というわけで、発行体の皆様には、是非ともスプレッドを大きく乗せた社債を発行していただきたくお願いいたします。当ブログの読者の皆様におかれましても、ご指導、ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。今年もいい社債が数多く発行されますように。
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