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東電の国有化は是か非か

東日本大震災でチェルノブイリ級とも言われる大災害を起こした東京電力ですが、早くも国有化、公的資金投入等の話が出てきています。正直、ここまでの事故を起こしたので法的整理はやむを得ないと思うのですが、電力供給が重要だからといって安易に公的資金を突っ込もうという流れに違和感を感じるのはshasaiwatchだけでしょうか。そもそも国有化で問題が解決するのでしょうか。shasaiwatchは単純に国有化するやり方は問題を解決しないと考えます

今回、東電が抱えている課題は「大惨事の回避」「放射能汚染の除去と賠償」「電力の安定供給」に集約できます。このうち、とりあえず大惨事は回避できたようなので、残り2つの課題に対処していけばいいわけです。いずれにしても金がかかる話で、倒産を回避できるか否かは、この資金をどうやってかき集めるかにかかっています。

しかし、そもそも東電はいくらかき集めれば倒産を回避できるのでしょう?ちょっと試算してみましょう。「東電の」損害を試算してみます。東電の損害は大きく分けて、「B/S上の被害」「特別損益」「今後の収益減」があります。これらを積み上げれば東電がかき集めるべき資金が分かります。ちなみに金額は大雑把で適当な見積もりです。

最初のB/S上の被害についてですが、とりあえず東電の直近の有価証券報告書を見てみます。原発関連では、原子力発電設備が8,500億円、核燃料が9,200億円あります。この中でいくら損失になるかというところですが、正直なところ、現在の日本はどれだけ頑張っても当面の間、原発に依存せざるを得ません。そのためこれらの資産が全くパーになることは考えられませんが、福島原発に使っていたものはパーにせざるを得ないでしょうし、今後の原発行政の転換によっては除却・減損が発生することは避けられません。実際いくらの損失になるかは予測不能ですが、このうちの30%、5,300億円程度は損失になってしまうものと適当に計算します。これがB/S上の損失です。

次に特別損失についてですが、特別損益には「福島第一原発の処理費用」「廃炉費用」「周辺地域への賠償金」「国からの補助金」「事故に伴う保険金収入」「各種引当金の戻入」などが挙げられます。

原発の処理費用と廃炉費用についてですが、これも合理的な見積もりを提示することは困難ですが、一応どっかのテレビ番組で「石棺は原子炉1基につき2,000億円」という報道がありました。これよりは少なくなるのではないでしょうか。とりあえず、4号機まで廃炉ということで8,000億円以内とします。

周辺地域への賠償金ですが、これもまた見積もりが困難な課題ですが、東海村臨界事故の際、3日間、半径350mが避難して150億円の賠償額だったそうです。しかし、今回は半径30km、面積にして7,350倍、期間は最低でも数ヶ月という有様です。軽く電卓を叩くと日本のGDPを超える賠償額が出てきたので、それはないとしても、福島県のGDP7.8兆円の3分の1ぐらいはもっていかれるのではないでしょうか。2兆6,000億円と推測します。

一方収入である国からの補助金は2,400億円(確定)、各種引当金の戻入といっても、資産除去債務と災害損失引当金が8,400億円あるのみ。これも全部取り崩すことは出来ないはずです。半分の4,200億円が関の山。残るは保険金ですが、1,000億円も得られないのではないかと・・・

とりあえず、ここまでで3兆1,700億円の損失です。東電の平成22年12月時点の純資産が2兆9,800億円ですので、この時点で債務超過転落決定です。

最後の「今後の収益減」ですが、計画停電が続くだけでも大幅な減収になりますし、ましてや安い原発を使わず、火力発電に依存したり、自然エネルギーを多用したりすると間違いなく収益力は減退します。東電の収益力は年間2,000億円程度の収益力ですが、あくまで原発依存のもの。おそらく当面は収益ゼロが続くのではないでしょうか。下手すれば赤字体質の会社になってしまいます。

昨年、東電の増資を引き受け、今までホールドしていた皆さんご愁傷様です。東京電力株は今や、収益性もなく、債務超過なので資産性もない無価値な株だという結論がshasaiwatchの大雑把な推定で結論付けられました。今さら言うまでもないですが、売り推奨です。

では一方、資金繰りはどうでしょうか。先ほどの損失額のうち、資金流出と流入の差は3兆0,600億円です。このうち東電は2兆円を既に資金調達しているほか、平成22年12月時点で約1兆円の換金可能な資産を持っています。資金流出が一気に起こるわけではないことを考えると、資金繰り上は当面の間は何とかなるでしょう。もっとも、東電は社債の償還や借入金の返済で当面1年以内にあと1兆5,000億円程度を別途調達する必要があります。

こうしたことを考えると、賠償がきっちりなされるまでに東電の資金繰りが破綻する可能性もあります。電力会社が経営破綻したとなれば、誰が東京に電力を供給するのでしょう?首都圏が真っ暗になるかもしれません。

しかし、shasaiwatchは東電に公的資金を入れることは、決していいことはではないし、せざるを得ない状態になったとしても限定的にするべきだと思います。その理由は、今回の事故の原因は東電の企業体質にあると考えるためです。

東京電力は国から認められた独占企業であり、規制を受け入れる代わりに地域独占を認められてきました。その結果、お役所体質、隠蔽体質、事なかれ主義が企業体質となり、まずいこと、問題のあること、面倒なことから目を逸らし、自分のいる間だけ問題が顕在化しなければいい、臭いものには蓋をする考え方が社内に蔓延している企業です。こうした根性を叩きなおさなければやがてまた同じことをやらかすのは目に見えているわけで、そのためには優秀な経営者を入れ、人づくりからやり直す必要があります。それを日本政府が出来るのでしょうか?郵便局は無残な失敗に終わりましたし、JALはまだ結果が出たというには時期尚早です。

原子力発電自体を公的管理に置くべきとする考え方もあります。私益を追求する企業に危ないものを管理させるなという意見です。事の重大性を考えればその意見にも全くの正当性がないわけではないですが、利益至上主義が福島第一を起こしたとはshasaiwatchは考えません。利益至上主義は競争の激しい世界で発生するものであり、東電はその対極にある業界でした。今回の事故を起こしたのはむしろ東電の閉鎖的な気質です。むしろ、競争的な環境にある方が原発事故は起きないでしょう。特に今回の事故で、原発事故を起こすとチッソ状態になるということが明らかになった今は。

(チッソは、水俣病の補償とその後の信用低下により、内部留保と資本金を上回る累積損失を計上し、現在も大幅債務超過の状態にあります。水俣病の補償問題が一応の終結をみたのは、1953年~56年とされる発生から50年以上経過した2011年3月28日、つまり5日前です。)

じゃあどうすればええねんという話になりますが、さっさと会社更生してしまうべきでしょう。会社更生となれば、株主も、担保付社債の社債権者も全く保護する必要がなくなり、経営陣は強制総退陣と東電を変えるためには最高の土壌が整います。それと合わせて「福島の事故に伴う損害賠償請求権は他の債権者に優先する」という法律を1本国会が通し、損害賠償を保全します。

その上で、損害賠償をする旧東電と、電力供給を行う新東電に会社分割し、新東電を同業他社・ファンド等に売却します。つまり、例えば関西電力がPEファンドやハゲタカファンドと組んで新東電を買収し、電力供給を継続。売却代金をもって損害賠償を行い、不足が出ればその段になってようやく公的資金を注入するべきでしょう。また、場合によっては同業他社やファンドの資金調達に公的資金を注入してもいいでしょう。

東電が会社を切り売りした代金で損害賠償が出来れば、社債権者へ配当してやればいいでしょうが、果たして余るかどうかは不透明です。株主も債権者も、被災者とともに泣くべきです。少なくとも株主・債権者・取引銀行はこのような事故を起こさないよう、経営を監視する義務があったはずです
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コメント


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No title

日銀がお金刷りまくって、1000%以上のインフレ起こしておしまい。となるかも・・・

無記名債さん | URL | 2011-04-10(Sun)19:11 [編集]


No title

私もロビン氏の仰るとおり暗黙の政府保証があると思います。

無記名債さん | URL | 2011-04-05(Tue)22:23 [編集]


No title

ロビン氏のようになると思います。

無記名債さん | URL | 2011-04-05(Tue)19:29 [編集]


No title

「さっさと会社更生してしまうべきでしょう」は絶対無理なのです。事故後に政府がメガバンクに強制した二兆円の融資があります。まともなバンカーなら絶対拒否した融資です。もしこれが回収できなければ全メガバンクの取締役のクビがとびます。株主から賠償責任を問われるでしょう。当然暗黙の政府保証があるはずです。この融資を別枠に出来る方法がなければ会社更生にはもっていけないわけです。

ロビン | URL | 2011-04-04(Mon)21:26 [編集]